ACMセンサ計測の原理と概要
ACM(Atmospheric Corrosion Monitor)型腐食センサ(通称ACMセンサ)は、東京大学 辻川名誉教授、物質・材料研究機構(NIMS) 篠原ディレクター、東京海洋大 元田教授らが開発した、環境因子により電気化学的に発生する金属の腐食電流を直接計測できるセンサです。
ACMセンサの出力を解析することにより、環境の腐食性を直接、かつ定量的に評価することが可能となります。
【ACMセンサの原理】
基板となる対象金属(Fe、亜鉛メッキ鋼板など)の上に、絶縁ペーストをスクリーン印刷・焼成硬化し、さらにその上に基板との絶縁が保たれるように導電性ペースト(Agなど)を積層印刷・焼成硬化、乾燥状態で両極間の抵抗が10MΩ以上のものをセンサとして用います。
(株式会社シュリンクスでは絶縁抵抗1GΩ以上を合格としています)
これを、大気中に暴露すると、降雨や結露などによって両金属間に薄い水膜が形成されて、ガルバニック電流が流れます。
※無抵抗電流計(短絡電流を測定)
この電流は腐食速度と良い相関関係があるので、大気環境の腐食性をモニタリングすることができます。
【何がわかるのか】
- ぬれ時間
ACMセンサ出力の大きさは降雨時と結露時とで異なるので、この性質を利用してぬれ時間
を知ることができます。
- 海塩付着量
所定の海塩をACMセンサに付着させセンサ出力および相対湿度RHの関係式を示す較正曲線があります。これを用いて、海塩相当付着を推定することができます。
較正曲線から求められた式は相対湿度RHの三乗で近似していますので、相対湿度RHは海塩相当付着を求めるのに必要となります。
- 腐食速度
Feの腐食速度とACMセンサ出力の日平均電気量(Q)は以下の図の通りです。
ACMセンサ電流出力と腐食速度(log CR)は直線関係にありますので日平均電気量(Q)から
腐食速度を求めることができます。
独立行政法人 物質・材料研究機構http://www.nims.go.jp/mits/corrosion/ACM/cr.htmより引用
4.その他の情報
以下の内容についての論文,文献があります。
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